
シャンルウルファの位置する肥沃な三日月地帯は,農業を基盤とした定住生活と耕作とが始まった地と考えられています.この地域は,歴史を通じて穀物生産の中心地として栄えました.また,数々の文明が栄えたシャンルウルファで育まれた豊かな文化は,数々の美味しい料理を生み出してきました.
ケバブ,イチリ・キョフテ(ひき肉の詰め物入りミートボール),チー・キョフテ(生のミートボール)といった有名な郷土料理は,トルコ全土で人気を博しています.シャンルウルファの数ある名物の中から,いくつかを以下に紹介します.
Çiğ Köfte(チー・キョフテ)
チー・キョフテは,「生のミートボール」という意味で,ブルグル(乾燥挽き割り小麦)やイソット(ウルファ産の唐辛子),生のひき肉など少なくとも10種類の材料を練り合わせて,手で成形されたキョフテです.
ウルファでは,チー・キョフテに使われる肉は,赤みの多い脚の肉が選ばれています.また,牛ではなく,ウルファ産のイヴェシ種の羊の脚肉を好んで使うようです.
ウルファの食卓に欠かせないメインディッシュとなるチー・キョフテの起源は,一説によると,ある伝承に由来するとされています.預言者アブラハムは,当時の支配者ニムロドとその民が崇拝する偶像に抵抗し,唯一神の思想を守ろうとしたところ,ニムロドは街中の薪を集め,大きな火を焚いて彼をその中に投げ込もうとしました.このため,家庭で使用する薪は残っていません.そこで,夫が狩りで仕留めたガゼルを食卓に出そうとした女性は,石で叩いてつぶしたガゼルの肉に,ブルグル,イソット,塩,香辛料,みじん切りにした玉ネギ,水とを混ぜ合わせて,チー・キョフテを作ったということです.
ウルファの家庭の台所には,肉を叩くための黒い石と木槌,そしてキョフテをこねるための銅製のボウルが必ずあるといいます.
残念ながら,現在では,衛生面から生肉を使用したチー・キョフテの販売は禁止されているようです.お店では,生肉を使用しないチー・キョフテが提供されています.添えられた生野菜とともに,レタスや薄いパンで包んで頂きます.
İçli Köfte(イチリ・キョフテ)

イチリ・キョフテは,ブルグル(乾燥挽き割り小麦)で作られる皮に,ひき肉の餡を詰めて揚げたもので,トルコ全土で人気のある料理です.ウルファのイチリ・キョフテの特徴は,ひき肉にウルファ産のイヴェシ種の羊肉を使用していること,皮にイソット(ウルファ産の唐辛子)を使用していることのようです.
一説によると,ウルファのイチリ・キョフテは,チー・キョフテ(生のミートボール)から始まったとされています.チー・キョフテはすぐに食べなければなりませんが,ラマダン期間中のイフタール(断食明けの食事)に提供するために,生ではなく火を通したことが始まりだということです.
Ciğer Kebabı(ジエル・ケバブ)

ジエル・ケバブは,ヘーゼルナッツ大に切った子羊のレバーと,同じ子羊の尾脂とを,通常のケバブ用の串よりも細くて薄い専用の串に刺し,炭火で焼き上げたものです.ウルファのジエル・ケバブの特徴は,調理中にイソット(ウルファ産の唐辛子)を使用することのようです.
薄いパンに串から外したレバーを載せて,お好みでクミンなどを振りかけて頂きます.トルコ南東部では,市場などで働く人が朝食に頂くことも多いようです.
Patlıcanlı Kebap(パトルジャンル・ケバプ)

パトルジャンル・ケバプは,ナスとひき肉のケバブで,トルコ全土のケバブレストランで提供されています.ウルファのパトルジャンル・ケバプの特徴は,ひき肉にウルファ産のイヴェシ種の雄羊の脇腹肉を使用していること,ナスはウルファ産の種が少なく果肉の柔らかいビジレクナスを使用していることのようです.
皮から外したナスの身を,ひき肉とともに薄いパンで巻いて頂きます.ケバブの中でもあっさりと頂くことができる,個人的に大好きなメニューです.
Kıymalı Ekmeği(ラフマジュン)

ラフマジュンは,約5,000年の歴史を持つといわれる中東由来の料理で,アラビア語の「ラフム・ウ・マジン(肉と練り生地を意味する)」からその名が付けられています.
ウルファでは,葬儀の際に参列者に振舞われる料理の一つです.1960年代以降に,ラフマジュンは南東アナトリア地方からトルコ全土に広まったようです.
現在ではトルコ全土で様々なラフマジュンが提供されています.ウルファのラフマジュンの特徴は,ひき肉にウルファ産のイヴェシ種の雄羊の脇腹肉を使用していること,イソット(ウルファ産の唐辛子)を使用していること,ニンニクを加えず,玉ネギのみを使用していることのようです.

添えられた,レモンやパセリ,ミント,カブ,トマトなどの生野菜をラフマジュンで包んで頂きます.
Peynirli Kadayıf(キュネフェ)

キュネフェは,細かく刻んだカダユフ生地(極細の麵状の生地)の間にチーズを挟み,糖蜜と澄ましバターとを混ぜたシロップを塗り,天板で揚げたデザートです.ウルファのキュネフェの特徴は,ウルファ産のバターおよびチーズを使用していること,揚げた天板のまま提供されることのようです.
現在では,バクラヴァと同じようにトルコ全土で愛されるデザートとなっています.
Menengiç Kahvesi(メネンギチ・カフヴェシ)

メネンギチ・カフヴェシは,メネンギチの木の実から作られるコーヒーです.ピスタチオと同じウルシ科カイノキ属のメネンギチの木は,南東アナトリア,中央アナトリアおよび地中海沿岸地域の農村部に自生しています.ウルファ産ピスタチオの品種改良のため,接ぎ木に用いられているようです.
メネンギチ・カフヴェシは,カフヴェ(トルコ語で,コーヒーの意)とは呼ばれていますが,カフェインは含まれていないのだそう.淹れ方は,トルココーヒーと同じですが,蜂蜜を入れて提供されることが多いです.乳味を感じる,まろやかな飲み心地です.


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