
銅細工などの工芸品やピスタチオ,豊かな料理,モザイクなどで知られるトルコ南東部の都市ガズィアンテプは,トルコ独立戦争の献身により「ガズィ」という称号が与えられたという壮絶な記憶も有しています.
本記事では,実際に訪れた写真とともに,ガズィアンテプの見どころを紹介いたします.
Gaziantep(ガズィアンテプ)の概要

ガズィアンテプは,トルコ南東部アナトリア地方,メソポタミアと地中海地域の交差点に位置する都市です.
東はシャンルウルファ,西はオスマニエ,北はカフラマンマラシュとアディヤマン,南はシリア,キリスおよびハタイに接しています.トルコ統計局の住所登録人口統計システム2025年データによると,人口は2,222,415人で,シャンルウルファに次いでトルコで9番目に人口の多い都市です.
ローマ時代に監視塔として建設されたガズィアンテプ城を中心に集落が発展し,都市化されてゆきました.12世紀には,ガズィアンテプはルーム・セルジューク朝の支配下に置かれます.その後,マムルーク朝やドゥルカディロウル侯国などの支配を経て,1516年にオスマン帝国の支配下に置かれました.

オスマン帝国時代,ガジィアンテプは経済的にも文化的にも発展を遂げ,モスク,キャラバンサライ,ハマム,バザールなどが立ち並び,人々は繁栄を享受したといいます.
第一次世界大戦後のオスマン帝国の崩壊に伴い,ガズィアンテプは1918年にイギリス軍に,1920年にはフランス軍に占領されてしまいます.ガズィアンテプの人々は,この占領に対して強い抵抗を示し,トルコ独立戦争における英雄的行為の偉大な例として称えられています.
かつてはアンテプと呼ばれていましたが,この独立戦争における功績により,1921年にトルコ大国民議会により「Gazi(トルコ語で,退役軍人などの意)」という称号を冠した「ガズィアンテプ」と改名されました.

トルコのデザートに欠かすことのできないピスタチオは,かつては国内の生産と流通との大部分がガズィアンテプで行われていました.トルコ語で,ピスタチオを「Antep Fıstığı(アンテプのピーナツ)」と呼ぶのは,トルコで最初のピスタチオ加工工場が設立されたのがガズィアンテプであったためだといいます.
ガズィアンテプの見どころ
Zeugma Mozaik Müzesi(ゼウグマ・モザイク博物館)

ゼウグマ・モザイク博物館は,建物の規模と展示されているモザイク面積との両面において,世界最級のモザイク博物館として知られています.
2011年9月9日に開館.総床面積30,000平方メートル,屋内スペース25,000平方メートルを誇るゼウグマ・モザイク博物館は,3つのセクションで構成されています.第1セクションでは,古代都市ゼウグマから発掘されたモザイクが,第2セクションでは,ガズィアンテプとその周辺地域から発掘された5世紀から6世紀の教会のモザイクが展示されています.第3セクションは,行政施設や会議場などで構成されています.

ここに,ゼウグマとは,ガジアンテプ県ニジップ地区ベルクス村の境界内,ユーフラテス川のほとりに築かれた古代都市の名前です.アレクサンドロス大王の将軍であり,後にシリア王となったセレウコス・ニカトルは,紀元前300年にこの地に都市を建設し,自身の名とユーフラテス川の名とを組み合わせて「セレウコス・ユーフラテス」と名付けました.その後,紀元前1世紀にこの都市はローマの支配下に置かれ,都市名も「橋」もしくは「渡河地点」を意味する「ゼウグマ」へと変更されました.ゼウグマの人口は急速に8万人にまで達し,ユーフラテス川を見下ろす斜面にヴィラが建てられました.今日見られるモザイクは,これらのヴィラのものとされています.
ゼウグマ・モザイク博物館の最大の見どころは,「ジプシーの少女」と名付けられたモザイク画です.

「ジプシーの少女」は,ヴィラ・マイナドの食堂の床のモザイク画の一部で,大きな絡み合ったフープピアスを身に着けていることから,その名が付けられました.実際には,頭の近くに蔓の葉が描かれていることから,ディオニュソス祭に参加し,この神の信者であった「マイナド」であったと考えられているようです.表情に喜びと悲しみとが同時に映し出されていることから,レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」にも例えられています.
2時間程度の余裕を持って回られることをおすすめいたします.
Zeugma Mozaik Müzesi
住所:Mithatpaşa Mahallesi,Hacı Sani Konukoğlu Bulvarı Tekel Caddesi,No:2
営業時間:8.30 – 19.00(4月~10月),8.30 – 17.00(11月~3月)
定休日:なし
料金:12ユーロ(オンライン)
URL:https://muze.gov.tr/muze-detay?SectionId=GZN01&DistId=GZN
Gaziantep Kalesi(ガズィアンテプ城)

ガズィアンテプ城は,市街中心部のアレベン川南岸,紀元前4000年頃の初期青銅器時代に遡る丘の上に築かれています.
北側の角塔は,ローマ支配下の1世紀後半に駐屯地として最初に建てられたと考えられています.西暦6世紀に,ガズィアンテプ城はビザンツ皇帝ユスティニアヌス1世(在位:西暦527~565年)により建設されました.その後,この地域を征服した様々な国家により城の増改築が行われています.正門の上にある碑文によると,正門と橋の両側の塔は,オスマン帝国時代の1557年にスレイマン大帝により再建されました.さらに,城にはローマ時代とビザンツ時代との遺構に加え,マムルーク朝,ドゥルカディロウル侯国,オスマン帝国の支配者による修復を示す碑文も残っているようです.

ガズィアンテプ城は,直径100メートル,円周1,200メートルの不規則な円形をしています.エヴリヤ・チェレビは,城には2つのハマム,モスク,20軒の家,そして城司令官の住居があったと述べているようです.これらの2つのハマムとモスクとは調査により発掘されました.
2023年2月6日の地震で甚大な被害を受けたガズィアンテプ城は,修復工事が行われており,2025年9月に訪れた際は閉鎖中でした.現在は,修復工事は完了しているようですが,一般公開されているか否かは未確認です.
Gaziantep Kalesi
住所:Seferpaşa Mahallesi, 27240 Şahinbey/Gaziantep
営業時間:8.30 – 17.30
定休日:月曜日
料金:―
URL:https://muze.gov.tr/muze-detay?SectionId=GKL01&DistId=MRK
Panorama 25 Aralık Gaziantep Savunması Kahramanlık Panoraması Ve Müzesi(パノラマ12月25日ガズィアンテプ防衛戦英雄パノラマ博物館)

パノラマ12月25日ガズィアンテプ防衛戦英雄パノラマ博物館は,フランス軍がガズィアンテプを去った1921年12月25日から100周年を記念して,ガズィアンテプ大都市圏自治体により開設されました.
フランス軍の砲撃により破壊された兵舎跡地に建設されたこの博物館では,アンテプ防衛戦が,14点の油絵,3つのジオラマ,そして長さ120メートル,高さ13メートルにも及ぶパノラマ展示を通して描かれており,また,アンテプ防衛戦で殉死または負傷した人々の遺族から寄贈された戦時中の遺物も展示されています.

1918年にイギリス,1919年にフランスによる不当な占領を受けたアンテプでは,女性や子ども,若者や高齢者も含めて,武器や弾薬が不足したまま市民が街を守りました.博物館では,6,317人が殉死した壮絶な戦いを目の当たりにさせられます.
所要時間は,1時間程度です.
Panorama 25 Aralık Gaziantep Savunması Kahramanlık Panoraması Ve Müzesi
住所:Karagöz, Derekenarı Cd No:39, 27080 Şahinbey/Gaziantep
営業時間:8.30 – 17.00
定休日:―
料金:―
URL:https://gaziantep.bel.tr/tr/tarihi-ve-kulturel-eserler/muzeler/panorama-25-aralik-muzesi
Bakırcılar Çarşısı(銅細工バザール)

一般的に銅細工バザールとして知られるガズィアンテプの銅細工バザールは,実際には多くの手工芸品が生産されています.木造の店構えと石畳の通りが,古き良き時代の面影を今に伝えています.

バザール内の店舗の正確な建設時期は不明ですが,19世紀に建てられたと考えられているようです.バザールの名前の由来となった銅細工の技術は,今日でもなお盛んに受け継がれています.
Bakırcılar Çarşısı
住所:Boyacı mahallesi Şahinbey Gaziantep
営業時間:―
定休日:―
料金:―
URL:https://gaziantep.bel.tr/tr/tarihi-ve-kulturel-eserler/tarihi-carsilar-pazarlar-ve-bedestenler/bakircilar-carsisi
Hamam Müzesi(ハマム博物館)

ハマム博物館は,ガズィアンテプのハマム文化を紹介する博物館です.
建物は,ララ・ムスタファ・パシャにより建設された複合施設の浴場部分として使われていました.寄進記録によると,1577年に建てられたとされているようです.ガズィアンテプ大都市圏自治体により修復され,2015年9月4日に一般公開されました.

博物館は,オスマン帝国時代のハマムの伝統を保存するために,創建当時の姿に忠実に再現されているようです.冷浴室,ぬるま湯室,熱湯室といった伝統的な浴場に加え,浴場用具や設備,蝋人形,模型,解説パネルなどにより,当時のハマムの習慣や人々の生活が鮮やかに再現されています.
所要時間は,30分程度です.
Hamam Müzesi
住所:Karagöz Mahallesi Sadık Dai Sokak No: 20 Şahinbey / Gaziantep
営業時間:8.30 – 17.30
定休日:―
料金:30トルコリラ
URL:https://gaziantep.bel.tr/tr/tarihi-ve-kulturel-eserler/muzeler/hamam-muzesi
Zeugma Antik Kenti(古代都市ゼウグマ)

古代都市ゼウグマは,ガズィアンテプのニジップ地区から東へ約10キロメートルに位置しています.紀元前300年,アレクサンドロス大王の将軍の一人であったセレウコス・ニカトルは,アレクサンドロス大王がユーフラテス川を渡った場所にセレウコス・ユーフラテスという都市を建設しました.紀元前1世紀にこの都市はローマの一部となり,その名は「橋」もしくは「渡河地点」を意味する「ゼウグマ」と改められました.
ゼウグマは,戦略的に有利な立地条件から,高官や裕福な商人たちが暮らす壮麗な都市であったといいます.1993年から2003年にかけて行われた発掘調査により,ローマ時代の数多くのヴィラが発見されました.これらのヴィラの浅いプール,噴水,そして部屋の床に見られるモザイクには,演劇や神話の場面,そして幾何学模様が描かれています.

ビジレクダムの建設に伴い,多国籍による発掘調査が多なわれ,出土した芸術的価値の高いモザイクはゼウグマ・モザイク博物館に展示されています.古代都市の一部分は,ダムに沈んだようです.
ゼウグマの発掘調査は現在も継続されており,出土した建築遺構は現地で展示されています.ガズィアンテプ中心部から自動車で向かうと,1時間程度かかりますが,晴れた日はダムの風景が美しく,実際のヴィラの大きさや高低差を体感することができます.
Zeugma Antik Kenti
住所:Belkıs Merkez Mahallesi, 27700 Belkıs Köyü/Nizip/Gaziantep
営業時間:8.00 – 17.00
定休日:なし
料金:5ユーロ
URL:https://gaziantep.bel.tr/tr/tarihi-ve-kulturel-eserler/antik-kent-ve-oren-yerleri/zeugma-antik-kenti
ガズィアンテプで味わいたいグルメとおすすめのレストラン

ガズィアンテプの人は,「地球を一つの家だとすると,その台所は間違いなくガズィアンテプだ.」と胸を張ります.
大麦と小麦とが初めて栽培化された肥沃な三日月地帯の恩恵を受けたこと,歴史を通じて様々な文明の拠点となったこと,シルクロードや香辛料ルートの要衝に位置したことなどから,豊かな食文化が育まれてきました.
ガズィアンテプは,2015年にユネスコ創造都市ネットワークのガストロノミー分野に加盟認定されています.この時点で,現役人口の60%が食産業に従事しており,企業の49%は主に香辛料,穀物,ドライフルーツなどの食品に特化していたようです.
ガズィアンテプ料理は,肉,スパイス,野菜が絶妙に調和した数百種類ものメニューを擁しています.代表的な料理は,様々な種類のケバブ,ラフマジュン,ベイラン,カトメル,バクラヴァなどが挙げられます.以下に,地元の方から教えて頂いたおすすめのレストランを紹介いたします.
Metanet Lokantası | Beyran – Kebap(メタネット・ロカンタス)

ベイランやラフマジュンが食べられる人気店.
ここに,ベイランは,羊肉と米などから作られる郷土料理で,肉と骨とを10時間以上かけて煮込まれるスープが特徴です.オスマン帝国のスルタンの病を治したスープともいわれ,現在でもその薬効を期待してベイランを飲む人もいるようです.
ラフマジュンは,約5,000年の歴史を持つといわれる中東由来の料理で,アラビア語の「ラフム・ウ・マジン(肉と練り生地を意味する)」からその名が付けられています.ガズィアンテプのラフマジュンの特徴は,羊のひき肉,ニンニク,パセリ,ピーマン,トマト,塩,黒胡椒,赤唐辛子フレークを使用し,玉ネギは使用しないようです.
売り切れのため,営業時間よりも早めに閉まることが多いようです.午前中に訪問されることをおすすめいたします.
Metanet Lokantası | Beyran – Kebap
住所:Kozluca, Kozluca Cd. No:11, 27400 Şahinbey/Gaziantep
営業時間:5.00 – 17.00
定休日:―
URL:―
imam çağdaş kebap ve baklava salonu(イマム・チャーダシュ・ケバプ・ヴェ・バクラヴァ・サロヌ)
1887年創業の老舗レストラン.ケバブやラフマジュン,カトメルやバクラヴァを広く美しい店内で頂くことができます.
価格は高めですが,サービスがよく,ラフマジュンとパトルジャンル・ケバプとを美味しく頂きました.写真を撮り忘れたことが悔やまれます.
imam çağdaş kebap ve baklava salonu
住所:Şekeroğlu Mahallesi, Uzun Çarşı Caddesi No:49, 27010 Şahinbey/Gaziantep
営業時間:―
定休日:―
URL:https://www.imamcagdas.com/
Koçak Baklava(コチャック・バクラヴァ)

ガズィアンテプで最高のバクラヴァだと紹介して頂いたお店.その大きな枕詞に違わず,私が今まで頂いたバクラヴァの中で,一番美味しく感じました.

Koçak Baklava
住所:Mücahitler, Abdulkadir Behçet Cd. No : 44, 27090 Şehitkamil/Gaziantep
営業時間:―
定休日:―
URL:https://www.kocakbaklava.com.tr/tr/
Tahmis Kahvesi(タフミス・カフヴェシ)

タフミス・カフヴェシは,メヴレヴィー教団の収入源として1635年に設立されたオスマン帝国時代の最も古いコーヒーハウスの一つです.
ガズィアンテプの中心部にあり,トルココーヒーや,ピスタチオと同じウルシ科カイノキ属のメネンギチの木の実から作られるメネンギチ・カフヴェシをゆっくりと味わうことができるお店です.

Tahmis Kahvesi
住所:Eski, Suyabatmaz, Buğday Pazarı Sk. No:8, 27400 Şahinbey/Gaziantep
営業時間:―
定休日:―
URL:https://www.tahmis.com.tr/
旅程

一日目:
12:30 ハルフェティ → 13:30 ゼウグマ遺跡 🚗車で移動🚗
13:30 ゼウグマ遺跡散策
14:00 ゼウグマ遺跡 → 15:00 ガズィアンテプ 🚗車で移動🚗
15:30 ホテルチェックイン
18:30 夕食,ガズィアンテプ城周辺を散策
二日目:
09:30 銅細工バザールなどを散策
10:30 ハマム博物館を鑑賞
11:00 パノラマ12月25日ガズィアンテプ防衛戦英雄パノラマ博物館を鑑賞
12:30 ゼウグマ・モザイク博物館を鑑賞
14:30 Koçakにてバクラヴァを食す
15:30 おもちゃ博物館やアタテュルク博物館などを鑑賞
16:30 夕食
20:00 Tahmis Kahvesiにてコーヒーを
三日目:
10:00 ホテルチェックアウト → アダナ 🚗車で移動🚗
本記事にて紹介した見どころは,ゼウグマを除けば,ほぼガズィアンテプ中心部に集中しています.
まとめ

ガズィアンテプは,トルコ独立戦争の壮絶な記憶とともに,銅細工などの工芸品やピスタチオ,豊かな料理,モザイクなど魅力的な観光資源を有する街でした.
ガズィアンテプの人々は,料理を愛し,分かち合い,食べることを楽しんでいるようです.
ガズィアンテプ城の下に発見されたトンネルは,一般公開を目指して整備が進められており,今後も魅力的な観光名所が増えていくことが楽しみです.


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