多くの観光客でにぎわうイスタンブールにおいて，「リュステム・パシャ・モスク（Rüstempaşa Camii）」は，静かに美しい空間を堪能することができる魅力的な場所です．
本記事では，リュステム・パシャ・モスクの歴史や見どころについて紹介いたします．
リュステム・パシャ・モスク（Rüstempaşa Camii）の歴史
リュステム・パシャ・モスクは，オスマン帝国最盛期を築いたスレイマン1世（スレイマン大帝）の娘婿であった大宰相リュステム・パシャの命を受け，1560年代前半に建設されました．
大宰相の座に２度就いたリュステム・パシャは，莫大な資産を築き，その一部を公共施設や慈善財団に投じています．彼の死後，トルコ最高の建築家と称されるミマール・シナンの設計により，リュステム・パシャ・モスクが造られました．その莫大な資産により，ふんだんに用いられた「イズニックタイル」が，このモスク最大の見どころとなっています．
リュステム・パシャ・モスクは，1660年のイスタンブール大火災と1766年の大地震により大きな被害を受けたようです．17世紀中頃と1960年～1969年に大規模な修復工事が行われていますが，ミナレットと装飾以外は，ほぼ当時の原型が保たれています．
建築とデザインの特徴
モスクの立地
リュステム・パシャ・モスクは，イスタンブールの賑やかな商業地区であるエミノニュ地区に位置しています．グランドバザールやスパイスバザールからも徒歩圏内にあり，観光の合間に立ち寄るにも便利な場所です．
この場所にはかつて小さなモスクがありました．ミマール・シナンは，モスクの下に商店を造り，沈下していた小さなモスク跡地を４ｍ引き上げることにより，周囲の騒音を遮断することを実現させています．通りを歩いても，一見モスクがどこにあるのかわからないほどですが，それもまた隠れた魅力の一つです．階段を上り中庭に出ると，そこには市場の喧騒とは一線を画す，静謐な空間が広がっています．
建築の特徴
ミマール・シナンは，このモスクで初めて八角形で支えるドームの建設を試みています．
直径15mある中央ドームは，８本の柱に架かるアーチ，両脇に置かれた八角形の柱，入り口と壁龕（へきがん）部にある２つの控え壁からなる八角形のブロックに取り付けられています．
中庭は，３辺を柱廊で囲まれています．
モスク西側にあるミナレットは，切り石で造られています．バルコニーへと続く螺旋階段は，一段24cmの階段が106段あり，バルコニーから上の部分を含めると，高さは約45ｍです．
イズニックタイル
リュステム・パシャ・モスクの最大の見どころは，壁を覆う美しいイズニックタイルです．
オスマン帝国時代，トプカプ宮殿には芸術様式や職人を確立するための「エフリ・ヒレフ」と呼ばれる組織があり，この職人らにより作成されたタイルが用いられています．
ちょうど，イズニックタイルが最盛期を迎え，生産量が頂点に達した時期と重なっています．
それまでのタイルは，白地にコバルトブルーで彩色された中国磁器の影響が顕著にみられるデザインでしたが，16世紀にはオスマン帝国独自の様式が発展し，チューリップやカーネーションのモーチーフなどが使われます．
コバルトブルーやターコイズを基調としたタイルの中で，とりわけ目を引くぷっくりと盛り上がった赤色は，「トマト赤」とも呼ばれるイズニックタイル独特の赤色で，現在では再現することが難しいことで知られています．
このように美しく貴重なイズニックタイルを惜しみなく使われたモスクは，イスタンブールにおいて他にはないといわれています．
アクセス
●住所：Rüstem Paşa, Hasırcılar Cd. No:62, 34116 Fatih/İstanbul
● トラム「Eminönü（エミノニュ）」駅より徒歩約10分
商店の上にあるため，入り口が見つけづらいかもしれませんが，地元の人に尋ねると快く教えてくださいます．私は，Hasırcılar（ハスルジュラル）通りの入り口から入りました．
モスクのため，入場料は無料です．観光客は，お祈りの時間帯は入ることはできませんのでご注意ください．
露出した服装は避け，女性は髪を覆うものを持参されるとよいです．
リュステム・パシャ・モスクでオスマン帝国の豊かな文化を体感しよう
リュステム・パシャ・モスクは，多くの観光客でにぎわうイスタンブールにおいて，静かに美しい空間を堪能することができる魅力的な場所です．
オスマン帝国時代の栄光を象徴するイズニックタイルの美しさや，ミマール・シナンの建築技術は，歴史や芸術に興味がある方にとって必見．モスクで販売されている書籍「ルステム・パシャ・モスク＆イズニック・タイル」を読まれると，建築やタイルの詳細をより楽しむことができると思います．
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