
トルコ最大の都市イスタンブールは,アジアとヨーロッパと2つの大陸をつなぐ唯一の都市であり,古くから東西文明の交差点として栄え,独自の文化を醸成してきました.
多くの観光客を魅了し続けるこの特別な場所で,ボスポラス海峡クルーズは,多くの歴史的建造物とイスタンブール独自の雰囲気とを一度に味わうことができるおすすめのアクティビティです.
本記事では,ボスポラス海峡クルーズの中でも,良心的な値段でイスタンブールをじっくりと楽しむことができる,イスタンブール市営Şehir Hatları(シェヒル・ハトラル社)のロングクルーズについて紹介いたします.
What’s Bosporus?

ボスポラス海峡は,イスタンブールを貫き,北は黒海,南はマルマラ海へと繋がる全長約30kmの海峡です.
最も幅の狭いところで700m未満というこの海峡は,東西の文明を結ぶ交易路としてだけではなく,戦略的にも重要な場所でした.
今でも海上交通の要衝であり,その機能を強化するため,新たにイスタンブール運河の建設計画が進められています.
ボスポラス海峡クルーズの概要

ボスポラス海峡クルーズは,いくつかの運航会社が運営しています.
クルーズには大きく分けて,ショートツアーとロングツアーとがあります.
ショートツアーは,所要時間1.5~2時間程度.旧市街を出発し,第二ボスポラス橋(Fatih Sultan Mehmet Köprüsü)付近でUターンするコースです.1日に複数運航されており,短期間で効率よく観光したい方におすすめのツアーです.
ロングツアーは,所要時間6時間程度.旧市街を出発し,黒海近くのアナドル・カヴァウ(Anadolu Kavağı)で折り返し,旧市街へ戻るコースです.クルーズ自体がイスタンブール観光のハイライトとなる充実した内容で,時間に余裕のある方や,長時間歩くことが困難なご高齢の方とご一緒の方などにおすすめのツアーです.
今回は,イスタンブール市営ならではの良心的なお値段でイスタンブールの歴史,文化,自然をじっくりと楽しむことができる,Şehir Hatları(シェヒル・ハトラル社)のロングクルーズを紹介いたします.
イスタンブール市営Şehir Hatları(シェヒル・ハトラル社)ロングクルーズの乗り方

2024年10月7日に乗船した際の情報です.詳細は以下の公式ホームページをご確認ください.
Şehir Hatları公式HP
ロングクルーズの時刻表
市営のロングクルーズは,基本的に1日1便毎日運航されています.
タイムテーブルは以下のとおり.
Eminönü(10:35出発)→ Beşiktaş→ Üsküdar→ Kanlıca→ Sarıyer→ Rumeli Kavağı→ Anadolu Kavağı(12:25到着)アナドル・カヴァウにて途中下船・自由行動
Anadolu Kavağı(15:00出発)→ Rumeli Kavağı→ Sarıyer→ Kanlıca→ Üsküdar→ Beşiktaş→ Eminönü(16:40到着)
ロングクルーズの料金
市営のためか,トルコ国民と外国人とで料金が異なります.
外国人料金は480TL(2,074円),トルコ国民料金は240TL(1,037円)でした.
※1 トルコ リラ =4,32 日本 円 2024年10月7日現在
私は有効期間1年間のイカメットを試しに提出してみましたが,受け付けられず,結局外国人料金を支払いました.
ずいぶんと値上がりした印象がありますが,それでも,6時間の船旅を楽しむには十分にお値打ち価格だと思います.
出発場所とチケット購入方法

市営クルーズは,イスタンブール市内の主要な港エミノニュ港(Eminönü İskelesi)から出発します.
乗り場は,下記に示す地図の「Şehir Hatları Bosphorus Cruises」です.ガラタ橋より少しシルケジ側にあります.
チケットの購入は,当日に港の窓口で行います.
公式ホームページを見る限り,事前予約はできないようです.私たちは出発時刻の20分ほど前に到着しチケットを購入しましたが,その後にも行列ができていました.船内の座席数は乗客に対して十分余裕がありました.
待合室にお手洗いはないため,予め済ましておくか,乗船後に船内のお手洗いを利用しましょう.
船内の過ごし方


屋内にも屋外にも座席が用意されています.また,乗船階だけではなく,階段を下りた階にも屋外のみですが座席が用意されています.
座席は自由席です.
船は,往路はヨーロッパ側に沿って北上し,復路はアジア側に沿って南下するため,進行方向に向かって左側の席を確保するのがおすすめです.
船内には小さな売店がありますので,飲み物やトルコの国民食シミットなどを購入することができます.

もちろん,お手洗いもありました.
ロングクルーズで巡る主要スポット
ガラタ橋(Galata Köprüsü)とガラタ塔(Galata Kulesi)

金角湾に架かる橋,ガラタ橋は,船が通行する中央部以外は上下二層になっています.
上部は車道,下部はレストラン街となっており,多くの釣り人の姿で有名です.
その向こう,新市街にそびえたつのが,世界最古の塔の一つでありイスタンブールのシンボルの一つでもあるガラタ塔です.
かつては火災監視塔として使用され,現在は博物館として一般公開されています.展望台からイスタンブールの街を一望することができる,人気の観光スポットです.
ドルマバフチェ宮殿(Dolmabahçe Sarayı)

ヨーロッパ側の埋め立てられた海岸にそびえ立つドルマバフチェ宮殿は,バロック様式とオスマン様式とを折衷した壮麗な宮殿です.
1856年に完成したこの宮殿は,トプカプ宮殿に代わりオスマン帝国の王宮として利用されました.
トルコ共和国初代大統領ムスタファ・ケマル・アタテュルクが,生涯を閉じた宮殿でもあります.
ドルマバフチェ宮殿の正門は海側にあるため,上記写真のように正面から全貌を望むことができるのはクルーズならではの醍醐味です.
第一ボスポラス橋(15 Temmuz Şehitler Köprüsü)


第一ボスポラス橋は,ボスポラス海峡に架かる3つの橋梁のうち最も古く最南端に位置します.
1973年完成.橋長1,560m(中央支間長1,074m),幅員33.4m(6車線)の吊橋で,アジアとヨーロッパとをつなぐ交通の要衝です.
建設から40年以上経過した2013年12月~2019年3月,日本企業のIHIインフラシステムがトルコのゼネコンとのJVで大規模修繕工事を行っています.
下から見上げる吊橋のダイナミズムは,クルーズならではの醍醐味です.
ルメリ・ヒサル(Rumeli Hisarı)

ボスポラス海峡のヨーロッパ側には,ルメリ・ヒサルと呼ばれる城塞があります.
1452年,当時東ローマ帝国の首都であったコンスタンティノープルを攻略するため,オスマン帝国メフメト2世の命によりわずか4ヶ月程度で造られたもので,ボスポラス海峡の最狭部に位置しています.
対岸のアジア側にあるアナドル・ヒサルとともに,ボスポラス海峡からの東ローマ帝国応援艦隊を抑制しました.
1453年にコンスタンティノープルは陥落.
この攻略により,新たにオスマン帝国の首都となったコンスタンティノープルの歴史の終わりと始まりとを忍ばせる建物です.
第二ボスポラス橋(Fatih Sultan Mehmet Köprüsü)


第二ボスポラス橋は,ボスポラス海峡に架かる3つの橋梁のうちの一つで,第一ボスポラス橋の5km程度北側に位置します.
第一ボスポラス橋の交通渋滞解消のため,日本の円借款で日本企業により第二ボスポラス橋が建設されました.
1988年完成.橋長1,510m(中央支間長1,090m),幅員39.4m(8車線)の吊橋です.
2013年12月~2019年3月,第一ボスポラス橋とともに日本企業のIHIインフラシステムがトルコのゼネコンとのJVで大規模修繕工事を行っています.
ロングクルーズでは,第二ボスポラス橋も下から見上げることができます.
第三ボスポラス橋 Yavuz Sultan Selim Köprüsü

第三ボスポラス橋は,ボスポラス海峡に架かる3つの橋梁のうち最も黒海側に位置します.
2016年完成.橋長2,164m(中央支間長1,408m),幅員約58m(8車線+鉄道複線)の道路・鉄道併用橋で,世界初の本格的なディッシンガー形式吊橋(吊橋と斜張橋とのハイブリット構造)です.
日本企業の長大が施工監理を行っています.
そびえたつ白い主塔と,斜張橋の直線と吊橋の放物線とのコントラストが美しい橋梁です.
アナドル・カヴァウ(Anadolu Kavağı)にて途中下船・自由行動

市営ロングクルーズでは,アナドル・カヴァウで一旦下船,約2時間の自由時間があります.
ボスポラス海峡の北端,黒海に近い小さな漁村で,かつてはメカジキ漁などで生計をたてていたようです.現在は,ボスポラス海峡クルーズの乗客らにランチを提供する多くのシーフードレストランがあります.ざっと見たところ,各レストランの値段に大きな違いはないようでした.


村の北側には,1261年に建てられジェノヴァ城とも呼ばれるヨロス城(Yoros Kalesi)があります.
ここからは,黒海とボスポラス海峡との壮大なパノラマを楽しむことができるようです.
私は高齢の両親と一緒だったため登りませんでしたが,足腰が健康な方は是非とも訪れてみてください.

ボスポラス海峡ロングクルーズで歴史と自然とを堪能しよう

本記事では,イスタンブール市営ならではの良心的なお値段でイスタンブールの歴史,文化,自然をじっくりと楽しむことができる,イスタンブール市営Şehir Hatları(シェヒル・ハトラル社)のロングクルーズを紹介いたしました.
ボスポラス海峡は,国際航行に利用される世界で最も狭い海峡と言われ,毎日多くの貨物船やタンカー,フェリーなどが運航しており,海上交通の要衝として大きな賑わいを見せています.
また,その長い歴史から海岸沿いには多くの貴重な建造物が残り,海峡を行き交う人人の目を楽しませてくれます.
多くの歴史的建造物とイスタンブール独自の雰囲気とを堪能することができるロングクルーズで,素敵な旅の思い出を作ってください.
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