
中央アナトリア地方に位置するシヴァス(Sivas)は,セルジューク朝,オスマン帝国,トルコ共和国の遺跡を残す魅力的な都市です.首都アンカラから東へ約440kmに位置し,鉄道やバスでもアクセス可能で,かつてはシルクロードの要所として栄えた街でもあるようです.
参考:T.C. Sivas Valiliği – İlimizin Tarihçesi
私はカッパドキアから車で訪れ,半日かけて観光しました.本記事では,半日観光で訪れたシヴァスの主要な見どころを紹介します.
セルジューク朝の4つのメドレセ
メドレセとは,ムスリムの中等教育および高等教育を提供する教育機関をいうそうです.シヴァスに残る4つのメドレセは,徒歩で数分の距離にあります.
Gök Medrese(ギョク・メドレセ)

1271年,宰相サヒップ・アタ・ファフレッディン・アリにより創建.
名称(Gök:トルコ語で空の意)は,建物に使われているターコイズ色のタイルに由来するようです.
2つのミナレットと細やかな装飾にため息の出る大理石の門など,サヒップ・アタの建造物の中で最も華やかなファサードを持つメドレセといわれています.
参考:Sivas Belediyesi – Gök Medrese


展示によると,このメドレセでは20人の寄宿生がイスラム法学を学んでおり,5年間のカリキュラムがあったそうです.独身の教師と生徒とは昼夜を問わずメドレセに滞在していましたが,既婚者は週に5日の帰宅が許されていました.休暇もあったようで,想像よりも寛大な印象です.
Şifaiye Medresesi(シファイイェ・メドレセ)

1217年,セルジューク朝のスルタン,イッゼッディン・ケイキャヴス1世により医療施設として創建.
アナトリアにおけるセルジューク朝の医療施設および病院の中で最大の規模を誇るようです.病院は,1768年の勅令によりメドレセに改装され,第一次世界大戦中は兵站として使用されました.
参考:Sivas Belediyesi – Şifaiye Medresesi
中庭のカフェでは,噴水を望みながら軽食を頂くことができます.
Çifte Minareli Medrese(チフテ・ミナレリ・メドレセ)

1271年,宰相サヒップ・シェムセッディン・ムハメッド・ジュヴェイニにより創建.
このメドレセは長い間放置され,1882年には病院として,その後はイノニュ学校として使われたそうです.
参考:Sivas Belediyesi – Çifte Minareli Medrese

現在は,東側の正面ファサードと2つのミナレットのみが残されており,シファイイェ・メドレセと対をなすように立っています.
Buruciye Medresesi(ブルジイェ・メドレセ)


1271年,ハメダーン(イラン)近郊のブルジェルド出身のムザッフェル・ブルジェルディにより,物理学,化学,天文学の教育を目的として創建.
壮麗で保存状態の良い正門を有するこのメドレセは,アナトリアで最も対称的なメドレセの設計を誇るようです.
参考:Sivas Belediyesi – Buruciye Medresesi

中庭があり,現在はカフェで休憩することができます.
Sivas Ulu Camii(シヴァス・ウル・ジャミー)

1197年,クズラルスラン・ビン・イブラヒムにより創建.
アナトリア最古のモスクの一つといわれています.中庭への三面の入口と平らな屋根を持つ長方形の平面形状を特徴とし,ドーム屋根の概念がまだ確立されていなかった時代に建てられました.
参考:Sivas Belediyesi – Sivas Ulu Camii
私が訪れた2025年9月は修復工事中で中に入ることはできませんでしたが,良く知られたドーム屋根を有するモスクとは異なる,薄暗い静謐な空間が広がっているようです.
Sivas Atatürk ve Kongre Müzesi(シヴァス・アタテュルクと議会博物館)

1892年,シヴァス総督メフメット・メムドゥ・ベイによりシヴァス中等学校として創建.
バロック様式の建造物は,「トルコ国家の解放を準備する決定が下された」シヴァス会議の舞台として知られています.
シヴァス会議は,1919年7月に開かれたエルズルム会議のあとをうけ,1919年9月4~11日に開かれたもので,トルコの領土保全,国民主権,国民会議の招集などが決議されました.


ムスタファ・ケマル・パシャと代表委員会とがアンカラに移転した後,この歴史的建造物は下士官学校,シヴァス高等学校,会議高等学校,アタテュルク会議・民族博物館として利用されたそうです.2016年に修復され,アタテュルクと議会博物館として再オープンしました.
参考:Sivas Belediyesi – Atatürk ve Kongre Müzesi
ムスタファ・ケマルは,現在のトルコ共和国の初代大統領であり,一部の批判を受けながらも不世出の英雄としてトルコ国民の敬愛を受け続けています.諸外国の介入からトルコを解放し,トルコ共和国誕生の道が開かれた歴史的建造物で,会議室に並ぶ机を目にすると,決して遠くない歴史のひとこまに居合わせたような感慨深さを覚えます.
Taşhan(タシュハン)

18世紀に建てられた隊商宿.
切石造りの2階建てで,中央に中庭があります.

現在は,小売店や飲食店が軒を連ねています.
シヴァスで味わいたいグルメ
シヴァスの名物として挙げられるのが,シヴァス・キョフテ(Sivas Köftesi)です.
キョフテは,トルコ全土で食べられているミートボールですが,シヴァス・キョフテの特徴は,平べったく(厚さ5㎜程度),塩以外の添加物が使用されていないということのようです.
私は,「Lezzetçi」というレストランで,シヴァス・キョフテを頂きましたが,くせのない味わいのキョフテのため,お店は雰囲気の好みで選ばれたら良いと思います.個人的にはキョフテよりも付け合わせのDövme Pilavı(大きめに砕いた麦のピラウ)が好みでした.

※1 トルコリラ は3.60 円 2025年9月4日現在
まとめ
セルジューク朝,オスマン帝国,トルコ共和国の遺跡を残す都市シヴァス(Sivas)は,主要な見どころが中心地にまとまっており,半日でもその魅力を感じることができます.
訪れた日は丁度,シヴァス会議開催の記念日だったため,ホテルの窓から航空ショーを望むことができたことも偶然の良い思い出です.ひどい混雑もなく,人々も親切でした.
トルコにしては路上のごみが少ないことは,良い驚きでした.
シヴァス中心部から150km程度東に位置する世界遺産「ディヴリーイの大モスクと病院(Divriği Ulu Camii ve Darüşşifası)」と合わせて訪問されるのがおすすめです.



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