人気狂言師である野村萬斎さんが東京2020大会開閉会式チーフ・エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターに就任されたこともあり,日本を代表する舞台芸術である能・狂言に興味関心を持たれた方も多いのではないでしょうか.
興味はあるけれど,能・狂言ってなんだか難しそう,敷居が高そうと感じていらっしゃる私のような初心者にうれしい,能・狂言の入門ガイド.
好きでもう何度も能楽堂に通っていらっしゃる方にも,新鮮な視点から気軽に楽しむことができる本になっていると思います.
書籍情報
一度は生の舞台で見てみたい能・狂言
でも,どこで観られるの?難しくない?眠くなったりしない?などなど,いろいろな心配がつきものです.こちらの本では,比較的よく公演される演目を紹介しながら,抱きがちな数数の疑問にかわいいイラストと文章とで解説していただいています.
マンガでわかる能・狂言: あらすじから見どころ、なぜか眠気を誘う理由まで全部わかる!
著 者:イラスト: スペースオフィス,監修: 小田 幸子
出版社:誠文堂新光社
発売日:2020/2/12
著者について
マンガ・執筆/スペースオフィス
画家の時松はるな、能楽好きのかめうみ、2人のユニット。
出典:誠文堂新光社 マンガでわかる能・狂言
かめうみが原案、時松がイラストを担当し、現代人と能狂言のキャラクターが混在するゆかいな世界観を展開。
作成・販売を行っている能楽グッズも好評。
監修者/小田 幸子
能・狂言研究家。主要研究テーマは、能狂言の演出史・作品研究。新作能の台本、復曲、講演など、研究と舞台をつなぐ活動も意欲的に行っている。主な著書に岩波書店『岩波講座能・狂言Ⅵ能鑑賞案内』(共著)、三省堂『狂言ハンドブック』(共著)など。2017年「第39回観世寿夫記念法政大学能楽賞」受賞。
出典:マンガでわかる能・狂言
本書のポイント
名作「野宮」を1曲丸ごと解説
・前場,間狂言,後場といった能の流れを実際の演目を通して解説されており,わかりやすい.
・能の楽しみ方の特徴として,ネタバレした方が面白いということがあります.鑑賞前に「あらすじ」や「典拠」を予習しておきましょう.
比較的よく公演される演目を見開き2頁でサクッと解説
・執着や後悔,苦悩や嫉妬など負の感情を見つめる重たいテーマを,柔らかい絵と猫の解説により,とりつきやすく面白く読み進めることができます.
・昼ドラや火サスを好きな方は,お能のお話もきっと好きなはず.
お能の楽しみ方のそれぞれ
・お能の注目点は,装束や能面,地謡や囃子,舞など,ストーリーを追うだけではない人それぞれのお気に入りポイントがあります.
まとめと感想
「幽玄」は,能の目指すべき理想の境地とされています.
同じような旋律,同じような動きが何度も繰り返され,一種の瞑想状態に入り込む.ということで,眠ってしまってもよいのだそうです(ただし,爆睡はしないこと).
寝て起きてを繰り返しているうちに,だんだんと夢と現実との境目がなくなってくる,夢うつつの状態を味わうという肯定的な意見です.
どこで観られるの?難しくない?眠くなったりしない?などなど,いろいろな心配に対して,かわいいイラストと分かりやすい文章とで解説されている,能・狂言の入門ガイド.
好きでもう何度も能楽堂に通っていらっしゃる方にも新鮮な視点から気軽に楽しむことができる本です.
分かりづらく奥深いお能のこの世を離れて広がる感覚は,宇宙と同じくらい未知で広く,だからこそ分け入りたくなる.これという正解はない.能を観ることで,あなたの人生に新たな感動を!
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